知らぬ間に法令違反?中小企業経営者が押さえるべき「偽装請負」の実態と「労働契約申込みみなし制度」のリスク対策

1. なぜ問題になるのか?「偽装請負」の定義と見落としがちな判断基準

「偽装請負」とは、書類上は「業務請負契約」や「業務委託契約」を結んでいるにもかかわらず、その実態(実質的な労働環境)が「労働者派遣」や「直接雇用」と同等になっている状態を指します。悪質な法逃れだけでなく、「実態を知らずに結果として偽装請負になっていた」というケースが多いのが中小企業の特徴です。

最大の発注基準は、発注元(自社)が外部スタッフに対して「直接的な指揮命令を行っているか否か」にあります。厚生労働省のガイドラインに基づき、請負と派遣の主な違いを以下の表にまとめました。

確認項目適正な「請負契約」の実態「偽装請負(派遣実態)」となる例
指揮命令権注文主(自社)は、外部スタッフに直接指示を出さない(受託者の責任者が指示)。「〇〇さん、この書類を15時までに修正して」と自社社員が直接指示する。
勤務管理始業・終業時間、休日、休憩時間は受託者側が自律的に管理する。自社のタイムカードで打刻させたり、残業の有無を自社が承認したりする。
業務の独立性自己の資金や機材、または専門的技術を用いて業務を完結させる。自社のデスク、パソコン、消耗品を無償で提供し、自社社員と区別なく働かせる。

このように、契約書の名称に関わらず、「実態として自社の指揮命令下に置いている」とみなされた場合は、労働者派遣法および職業安定法違反として指導・是正勧告の対象となります。

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2. 発動すれば拒否できない?「労働契約申込みみなし制度」の全貌

偽装請負が発覚した際、経営者として最も警戒すべき最大の法的ペナルティが「労働契約申込みみなし制度」です(労働者派遣法第40条の6)。これは、違法な労働者派遣(偽装請負を含む)を行った企業に対し、その違法行為が発生した時点で、「発注元企業がその外部労働者に対して、直接雇用の申し出(労働契約の申込み)をした」と法律上強制的にみなす制度です。

厚生労働省(東京労働局)のアナウンスでは、同制度の目的を次のように定めています。

「派遣先が違法派遣であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合に、派遣先に対して直接雇用の契約を申し込んだものとみなすことで、派遣労働者の雇用の安定を図ることを目的としています。」

本制度の恐ろしい点は、外部労働者が「その直接雇用の申し込みを承諾します」と意思表示(返答)をした場合、企業側に拒否権はなく、その瞬間に直接の労働契約が自動的に成立するという部分です。契約解除しようとしても、通常の解雇規制が適用されるため、簡単に辞めさせることはできなくなります。承諾の有効期限は、違法行為が終了した日から1年間です。

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3. 知らなかったでは済まされない、中小企業が被る経営リスクと実害

「労働契約申込みみなし制度」が発動し、意図しない直接雇用が発生した場合、従業員規模10〜50人規模の中小企業は以下のような致命的な経営リスクに直面します。

  • 人件費の予期せぬ高騰: みなし制度によって成立する労働契約の条件は、原則として「元の請負元(派遣元)との労働条件とほぼ同一」となります。突発的に固定人件費が増加し、経営圧迫要因となります。
  • 社会保険・福利厚生の適用義務: 直接雇用化に伴い、健康保険、厚生年金、雇用保険への加入手続きおよび会社負担分の支払い義務が発生します。
  • 企業名公表による社会的信用の失墜: 労働当局からの是正勧告に従わない場合、厚生労働省のウェブサイト等で企業名が公表されます。これにより、既存顧客からの信頼失墜や、採用活動における致命的な悪影響を招きます。

40代以上の経営者層に特に認識していただきたいのは、昨今のコンプライアンス意識の高まりです。働く側(労働者)もスマホやSNSで自身の権利(みなし制度など)を容易に調べられる時代であり、「うちは距離が近いから大丈夫」という甘い認識は通用しません。

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4. 社会保険労務士が直言する、偽装請負を未然に防ぐための3つの実践ステップ

外部リソースの活用を維持しつつ、偽装請負のリスクを完全に排除するためには、経営者主導で「仕組みの再構築」を行う必要があります。具体的には、以下の3つのステップを即座に実行してください。

  1. 【ステップ1:業務プロセスの遮断と「窓口」の一元化】現場の自社社員が、請負会社のスタッフに直接指示を出す環境を厳禁とします。指示や注文は必ず、請負会社が配置した「現場責任者(リーダー)」を通すルートに一本化し、マニュアル化してください。
  2. 【ステップ2:社内設備・備品利用のルール明確化】自社のパソコンやデスク、作業工具を無償で使わせることは、請負の独立性を損なう要因になります。機材を有償でリースする契約を別途結ぶか、あるいは受託者側で用意させるよう契約を見直します。
  3. 【ステップ3:定期的な「実態チェック」の仕組み化】社会保険労務士などの専門家を交え、年に1回は現場のヒアリング調査を行い、「契約書」と「現場の実態」に乖離がないかを監査する体制を整えましょう。

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