制度よりも「目線」が命。人材が定着する職場への3ステップ
介護・福祉業界において、離職防止はもはや経営の最優先事項です。しかし、立派な福利厚生や制度を整えても離職が止まらない現場は少なくありません。
先日、医介塾でのセミナーでお話しした「人材定着の3つのステップ」を軸に、現場で本当に必要な「社外人事部長」の視点を解説します。
1. 離職理由は「仮止め」でいい。まず動く勇気を持つ
多くの管理職が、スタッフから退職意向を告げられた際、「本当の理由は何だろう」と悩み、正解を見つけようとして足が止まってしまいます。
しかし、本当の理由は本人ですら言葉にできていないことが多く、深追いしても対策は遅れるばかりです。
ここで重要なのは、離職理由を「仮止め」して、とにかく対策(行動)を打つことです。
例えば「人間関係かもしれない」と仮止めしたなら、まずは面談の頻度を増やす、あるいは席替えをするといった具体的なアクションを即座に起こします。
大事なのはその対策が「正解」であることよりも、会社や上司が「自分たちのために動いてくれている」という事実をスタッフに見せることです。
もし効果がなければ、次の仮説を立ててトライ&エラーを繰り返せばよいのです。現場の停滞感こそが最大の離職リスクであり、
管理職の「まずはやってみる」というスピード感のある姿勢が、スタッフの安心感へと繋がります。
\評価制度の整備が含まれる/
中小企業に必要な人事改革
2. 管理職の「観察力」と「評価の作法」が離職を防ぐ
人材が定着する職場とそうでない職場の差は、制度の充実度ではなく、現場を仕切る管理職の「目線」の解像度にあります。
私が「社外人事部長」として事務職の職場を一日観察した際も、スタッフが発する微細なサインを管理職がどれだけ拾えているかが鍵だと痛感しました。
特に注意すべきは、日々の「観察」と「評価の伝え方」です。スタッフの変化に気づく観察力はもちろんのこと、評価の伝え方を一歩間違えると、それが離職の引き金になります。
以下に、管理職が心得るべき「目線のポイント」をまとめました。
| 項目 | 避けるべき行動(NG) | 実践すべき行動(OK) |
| 観察の視点 | 業務の結果だけを見る | 声のトーン、表情、周囲との関わり方の変化を見る |
| 評価の場所 | 他のスタッフがいる前で褒める・叱る | 必ず1対1の個室や落ち着いた場所で伝える |
| フィードバック | 抽象的な精神論を伝える | 観察に基づいた具体的な事実と期待を伝える |
特に「人前での評価」は、褒められた側には周囲への気兼ねを生ませ、叱られた側には深い屈辱感を与えます。管理職の些細な配慮の欠如が、現場の信頼関係を少しずつ蝕んでいくのです。
3. 「不公平さ」こそが最強の離職トリガー
人は「仕事が忙しい」という理由だけで辞めることは稀です。本当に心が折れるのは、納得のいかない「不公平さ」を感じた瞬間です。
特に事務職や複数の専門職が混在する職場では、業務配分の不透明さが大きな不満の種になります。
「なぜあの人だけ楽をしているのか」「自分ばかりが大変な仕事を押し付けられている」という感情は、一度芽生えると組織への不信感へと直結します。
社外人事部長としての観察を通じ、不公平感を生む主な原因は以下の3点に集約されることが分かりました。
- 業務量の偏り: 特定のスタッフに電話応対や突発的な仕事が集中している。
- 能力の依存: 「できる人」にだけ難易度の高い仕事が集まり、給与差がない。
- ブラックボックス化: 誰が何の仕事にどれだけ時間を使っているか、管理職が把握していない。
これらを解消するには、管理職が「誰が、何を、どれだけ抱えているか」を可視化し、公に調整する姿勢を見せることが不可欠です。公平な業務配分は、
単なる効率化ではなく「あなたの頑張りを見ている」という強力なメッセージになります。この公平性へのこだわりこそが、最強の離職防止策となるのです。
石井 隆介のセミナー実績

私は、年間50回以上のセミナー・研修登壇(掲載媒体数 5誌以上受講者数 300名超)を通じて、「信頼される管理職を育てたい」と願う多くの経営者・管理職の皆様を支援してきました。
特に近年は、テレワークや世代間ギャップの影響で、「これまで通じていたマネジメントが通用しなくなった」という相談が急増しています。
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【保有資格】社会保険労務士 登録番号:第14170086号
